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①+81 mind 状態-表

こころ: ここ、みてください!私のおでこ。

                  なんと、第三の目が開いたんです。浮くこともできるようになって!

ゆめた: オレ、羽ある。

てんこ: ふーん、そないなことより。俺の話、聞いてや。

こころ: 反応薄いですね。実は、瞑想をやってみたんです。

               そしたら、はまっちゃいました。瞑想って凄いんですよ。

               瞑想って、目をつぶって呼吸してるだけってイメージありますよね。

               でも、違うんです。

               一番のポイントは、「意識のコントロール」なんです。

               自分が一点の視点のみ、みたいになって、どこにでも意識を置けるようになって、

               そしたら、なんと第三の目が開いちゃったんです!!!

               今じゃ、瞑想はマインドフルネス精神療法として精神科でも使われてるし、

               外資系の一流企業が全社員に取り入れたって話題になったりしてるんですよ!!

てんこ: よう、人が聞いてもないのに、話せるな。あ、ゆめた寝てんで。

ゆめた: ・・・

てんこ: まあ、ゆめたには難しすぎたなあ。よだれ垂らしとるで。

     よほど、美味しい肉の夢、見とるな。

ゆめた: 勝手に決めるな! 焼き肉を食べていただけだ。

てんこ: うん、まあええや。

               ところで、この前ゴルフ行ったんや。ほな、ベストスコア出たんや。

ゆめた: なに~~~!?いくつだ???

こころ: もう無視ですか。いいです。私は浮いてます。

てんこ: なんと85やったんや。そん時は、本当調子ようて。もうゾーンやったな。

ゆめた: ゾーンってなんだ?

てんこ: 知らへんの?よう言うやろ。物凄い集中状態のこと。

                  ほんま、楽しかったで。
                  リラックスはしとるんやけど、凄いボールに集中できて。
                  何も考えず、無意識やったな。うまくいくイメージがそこにあって、自分はただ眺めてる感じ。

こころ: でも、楽しいって感じたのは、後からですよね。

               まさに、スイングの瞬間は、無に近い気持ちじゃなかったですか?

てんこ: あ、そうやねん。ようわかるな。

こころ: はい、私は何でも知ってますから。

ゆめた: こころはいつもゾーンで打ってるのか?

こころ: 単純ですね。知っていることと実践は違います。

               まあ、ゾーンの時は、意識を思考から外して、意識下に置いているんですね。

               それは瞑想の基本でもあります。

               ・・・あ!!!

てんこ: どないした?

こころ: わたし、ゾーンへの入り方、分かっちゃいました。

ゆめた: あ!!!こころ浮いてる!!!

こころ: ・・・今、ですか。

①+81 mind 状態-裏

 ゴルフは良くメンタルのスポーツと呼ばれます。止まっているボールを打つ。その特性から当然ですよね。理想のメンタルであれば、スコアが10は上がる。そういわれる所以です。「ゾーン」という言葉を聞いたことある方は多いのではないでしょうか。いわゆる、理想的な集中状態で、何をやってもうまくいく状態のことを言います。もちろんその人なりのベストという意味ですが。この「ゾーン」自体は、ゴルフに限らず、他のスポーツでも理想とされます。スポーツだけではなく、演劇、音楽などの芸術分野にも当てはまります。そして、他の仕事にも。物凄いアイデアがすっと降りてくる、又は物凄いパフォーマンスを発揮していて、気づいたら時間が経っていたなど、このような経験をなさっていた時には、「ゾーン」に入っていたかもしれません。

 「ゾーン」は正確な医学用語ではありません。無我の境地などと呼ばれることもあります。仏教や道教などでは、「禅」など精神開発の中心的部分として磨かれていました。西欧心理学では「フロー状態」として、1970年代にチクセントミハイが提唱しています。とはいえ、まだまだ医学的には未決着な分野と言わざるを得ません。用語の混乱をさけるために、ここでは同様のものを、「+81 mind 状態(ハイマインド状態)」と呼ぶこととし、

①リラックスしているのに集中している

②思考と感覚のバランスが極めて整っている(自覚としては「思考」していない)

③気分は「無」に近いが、「快」か「不快」なら「快」である(決して「楽しい」わけではない)

④「行動」をただ眺めているように感じる

⑤「時間」の感覚にもゆがみを生じうる 

 以上のように定義します。そして、一見バラバラなこの5つは「意識のコントロール」という点でつながっています。このコラムでは、ありがちなものと異なり、「実際に+81 mind 状態に入る方法を伝える」ことを目的としていきます。現時点では、私の知る限りそのような書物、ページは見当たらず、唯一無二のものを目指していきます。「意識の働き」「気分(感情)」「思考」「感覚」など、ダイレクトに関係する分野から、ここを理解していただいた方が、実践しやすくなると思われる周辺分野にも及びます。「認知行動療法」「筋肉と脳のつながり」「意識から見たゴルフのフォーム」「スランプ脱出法」「好調から不調に陥るメカニズム」「理想的なスイング間の歩き方」「ルーティーンの意義」など、様々な項目を取り扱っていきます。そして、一見バラバラなこれらが、最後は一本の「+81 mind 状態に入る方法」という糸に紡がれる、そのようなものとなっていきます。ゴルフ以外のスポーツや芸術、仕事にも応用は可能ですし、基本的な入り方は同一です。ゴルフを中心の題材として取り扱ってはいきますが、対象はゴルフをなさる方のみではありません。ピアノの発表会では緊張して実力を発揮できない方、手術のパフォーマンスを上げたい方、社員教育に使いたい方などみなさまに十分楽しんでいけるものになります。ぜひ、ご期待していただければと存じます。

 

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②意識の働き-表

こころ: ここのゴルフ場ランチ美味しいですね。

てんこ: 最近食べた肉の中でも二番目にうまいな。

こころ: ゆめた!そこの醤油取ってください。

ゆめた: ・・・

こころ: ゆめた!そこの醤油取ってください。

ゆめた: ・・・

てんこ: (バシッ)

ゆめた: 痛いな。何だ?

こころ: そこの醤油取ってください。

ゆめた: そのくらい、口で言え。たたく必要はない。

こころ: ・・・はい、わかりました。

てんこ: ゆめた、どないした?

ゆめた: うん、あそこの子がオレに気がある。

てんこ: オーケー、いつものことやな。

                  この前、タイプって言うとったメガネの司書の子はどうなったん?

ゆめた: 誰だ、その子は?

こころ: やめましょう。この話は。

               でも、ゆめたって集中力ありますよね。今も私の声が全く聞こえなかったし。

               これは、意識を聴覚に置かずに、あの女の子に置くことができてたってことですよ。

てんこ: 何やそれ?ただ、耳が悪いだけやろ。

こころ: いえ、違います。音って波動ですよね。

               その波が、外耳を通って、中耳、内耳、蝸牛神経、脳幹、一次聴覚野に伝わるじゃないですか。

               でも、それに意識を向けて、認識しないと、「聞こえた」ことにはならないですよね。

               もちろん、他に意識ががっちり置かれてる場合でなければ、こちらの声に意識が移るのですが。

               今は、ゆめたの顔の向きも耳の角度も変わっていないし、私の声の大きさも一緒です。

               変わったのは、ゆめたの意識が私の声に置かれたってことなんですよ

ゆめた: ・・・

こころ: あ、また寝ましたね。

てんこ: ・・・

こころ: てんこまで寝てる!寝ないでください。

てんこ: あ、おはよう。

こころ: はい、すいません。私が悪かったです。もう少しわかりやすく話します。

               今日、行きの高速道路、ずっと前の車、赤のポルシェでしたよね。

ゆめた: オレが、運転していたから。

こころ: それは、関係ないです。そのナンバーって覚えてますか?

てんこ: そんなん当然忘れてもたよ。覚えとる訳ないやん。

こころ: 本当に、忘れたのですか?

                  忘れたって言うのは、一度記憶して、その記憶をなくすことですよ。

                  記憶してないんじゃないですか?

てんこ: なんか、感じ悪いな、確かにな。

こころ: 目も一緒で、視野って人間そんなに障害とかなければ変わらないんです。

                  ゆめたがちゃんと運転をしていれば、前の車のナンバーは視野に入りますよね。

                  だから、前の車のナンバーは目には入っているんです。

                  でも、運転に必要な情報じゃないので、意識下で処理をしてしまっているのです。

ゆめた: オレ、ちゃんと運転をしていた

こころ: 大丈夫です。そんなことは言ってません。

               あえて、ナンバーに意識をおかない限りは、数字は覚えてないのは当然なんです。

               ナンバーは0516でした。母の誕生日だったので意識が置かれました。

ゆめた: オレ、覚えてる。0516だった。

こころ: はい、嘘です。本当は0603です。姉の誕生日でした。

ゆめた: ぬーーーー

こころ: 目に入っても、意識をおかないと、認識できないし、音も同じです。

               どちらも、自らでなくても意識が置かれてしまうことは多いですけどね。

ゆめた: 前のポルシェの運転席の女の子。黄色のネイルで、黄色のミニスカート。オレのタイプだった。

てんこ: ゆめた、さすが凄い記憶力!よう覚えてるなあ!

こころ: いや、それは視野の問題で無理な気が・・・

②意識の働き-裏

 今回は「意識の働き」の話です。

 いきなりですが、簡単なエクササイズをしていただければと存じます。

 

 エクササイズ1

 ①楽な姿勢で、目を軽く閉じます

 ②1分間(タイマーをセット)、何も考えない。  以上です。

 

 結果はどうでしたか?おそらく、何もせずボーっとできた方はかなり少ないと思います。うまくいった方は、「意識のコントロールの天才」と言って良いです。その方は、おそらく睡眠で困ったことなど皆無かなと思います。でも、ほとんどの場合、「ものを考えないって、難しいな、あ、これ考えてるな」「あ、なんか声が聞こえる」「よし、ものを考えないってうまくいったぞ」などと、色々考えてしまうと思います。これは「意識」が「思考」に置かれているということです。この意識をどうコントロールしていくかというのが大事になります。その前に、簡単に「心の機能」についての説明を。所説ありますが、

 

 心の機能

 1.感覚

 2.思考

 3.感情(気分)

 

 に大別されます。感覚というのは、外部または内部からの刺激を受けて生じる意識過程です。ひとまず、難しい定義はおいておき、いわゆる有名な五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)はこれに含まれます。温覚、冷覚、痛覚、運動感覚(位置覚、運動覚、抵抗覚、重量覚)、平衡感覚などヒトには50以上の感覚があると言われています。では、ここでもう一つのエクササイズを。

 エクササイズ2

 ①楽な姿勢で、目を軽く閉じる。なるべく静かな空間で行う。

 ②2分間(タイマーをセット)、背景の音に集中する。軽くゆったりと集中する。

 ③別の感覚に意識がいったり、考えが浮かんだら、もう一度「音」に意識を戻す。  以上です。

 どうでしたか?普段は気づかないような「音」に気づきましたか?また、エクササイズ1の時と比べて、「思考」が減ったでしょうか?もしも「思考」に飲み込まれそうになった時、「音」に意識を戻すことができたでしょうか?下の図をご覧ください。音に集中しようと意識をおいた状態が左側です。2分間の間でも、意識が耳と思考を行ったり来たりしたはずです。人は「思考」に意識をおいてしまいがちで、一番右側の思考に飲み込まれたような状態になりがちです。一度意識が思考に飲み込まれても、それを左側の再び音に集中する状態に戻す。これが、意識のコントロールの基本になります。そして、自身がどの状態にあるかを把握することが出発点となります

 ここまでで、「意識」のイメージを掴むことはできましたか?実はあえて「意識の働き」の定義については話してきませんでした。「意識の定義」自体は非常に難解で、最近研究が盛んで、新しい知見が得られてきていますが、長年、神経科学、解剖学、認知科学、人工知能、精神分析などの分野においても、それ自体を直接の研究対象とするのは最も困難と言われてきました。ただ、「意識の働き」というのは、非常に重要です。視覚においては、ただ視野に入っただけでは、それと認識できず、意識を置くことで認識できます。聴覚などほかの感覚も同様です。そして、次回以降で詳しく説明していきますが、思考や感情においても同様です。つまり、水面下では働いていても、意識を置くことがないと、ヒトは認識できないのです。意識の働きは、感覚、感情、思考など心の情報分類整理本部の役割ということができます。舞台では舞台上で役者が演じています。舞台上の複数の役者以外にも照明さんや大道具さんなど多くの人が働いています。しかし、観客からはその姿は見えません。スポットライトが当たった役者のみに観客は気づくことができます。このスポットライトの役割に、「意識の役割」は例えられることが多いです。

 

 では、この意識に容量はあるのでしょうか?聖徳太子は10人同時に話が聞くことができたと言われていますね。また、マルチタスクが得意と言われる人もいます。このような人は実際にその瞬間に複数のことに意識をもっていくことが可能なのでしょうか?私の答えはNOです。中枢神経系がどの程度の情報を処理できるかという研究は進んでいます。1ビットは同等に確かとされる一組の二者択一を含む情報の量を表す単位です。すると、ヒトが一時に処理できるのは7ビットまでと言われています。一組のビットを他の組から区別する最短時間は18分の1秒と言われていますので、7×18=126ビットが1秒間に処理できる意識の限界となります。これはどの程度の量かと言いますと、他者が何を話しているかを理解するのに必要なのが毎秒約40ビットです。これは同時に話を聞ける最大が3人であるということにとなります。しかし、この数値は他の感覚、思考、感情に意識が全く持っていかれず、(感情は「無」で、目からの情報にも全く意識を置かず、また相手の話に自分で反論や共感などを思いつかない)聴覚とそれを理解するための思考のみに意識を置くことができるという前提です。現実的には不可能ですし、2人も困難でしょう。これはみなさんの感覚とも一致するのではないでしょうか。実際には意識の限界である、126ビットは使用できず、心理的無秩序、心理的エントロピーと呼ばれる、その瞬間に存在する苦痛や恐れや不安などによって減少すると言われています。これが複数のことを考えながらプレイするとうまくいかない原因です。アドレスに気を付け、体重移動に気を付け、トップの位置や、手の返し・・・それらを考えながらスイングすると失敗する。それは意識の容量の限界から明らかです。では、どのようにしていけばよいか。これはもう少し話が進んでからとなります。

 

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③初期状態-表

ゆめた:うぉ~~~ ・・・(ズポッ)

こころ:ゆめた、すごーい。

ゆめた:次、こころの番。

こころ:・・・えい!・・・(スポッ)

    あー、やっぱり失敗しました。また、私の負けです。

ゆめた:いや、良い勝負だった。

てんこ:おー、自分ら何しとんの?

ゆめた:エルガノ・スピア

こころ:ゆめた、もう一勝負お願いします。

ゆめた:また、今度にする。用事ある。

こころ:負けたら、ラーメン一杯おごります。

ゆめた:・・・よし、もう一勝負。

てんこ:ちょっと待ってや!

    エルガノ・スピアって何?

ゆめた:・・・

こころ:本気で言ってるんですか?この村の伝統スポーツですよ。

    この槍を投げるんです。

    30m離れたところにある直径1mの的に当てます。

    1回きりの真剣勝負ですよ。

てんこ:なんや、凄いシンプルなゲームやな。せやけど、楽しそう。
    よし、俺にやらせてや。

ゆめた:だめだ。

てんこ:・・・だめ?

    今、だめって言うた?

    何で?

こころ:伝統をバカにしすぎですね。

    色々決まりがあるんですよ。

    槍を放つ角度は45°±1°って決められています。

    放たれた槍の初速度は時速60±1km です。

    その他にも、槍が放たれる地点の高さや、歩幅、所作など色々な決まりがあるんです。

てんこ:細かすぎやろう。そんな決められて楽しいのか?
    まあ、ええや。とりあえず、教えて

ゆめた:うん、オレ教える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

てんこ:いやー、ほんまに細かいな。
    大体そんな細かく決めても、ルール通りに投げたかどうかなんて、わからへんやん。

こころ:そこは長老の合議制でした。

てんこ:え・・・

こころ:さすがに、最近の大会はホークアイによる判定になっています。

てんこ:ホークアイってあれやろ?めっちゃ高性能のカメラやろ。

    凄い、大げさやな。そんな大会あったっけ?

こころ:年々、競技人口が減っているのは事実ですね。

    いまや、競技者は伝承者、エバンジェリストって呼ばれています。

    槍は樹齢100年の楢の木から削られます。

    規格も厳格で今や職人はげんじさん一人です。

ゆめた:オレ、げんじさん好き。

てんこ:うん、凄いのはわかった。よし、俺にもやらしてくれ。

こころ:わかりました。はい、どうぞ。

てんこ:・・・!!!

    なんや、これ???

ゆめた:てんこ、知らないのか?

てんこ:いや、知ってんで。ネギやろ。
    なんで、ネギなん?俺にも槍をくれ

こころ:伝統に対するリスペクトがないですね。

    エルガノ・スピアを始めて一年間はエントリアと呼ばれて、槍を持てず、ネギと決まっています。

    経験値の差か、歴史上、エントリアで的に当てた人は一人もいません。

てんこ:いや、経験値の差やないやろ。
    当たり前や。俺、やめる。

こころ:てんこ、あきらめた時点で終わりですよ。

てんこ:やかましい、絶対無理。ほんま、もうやめる。
    うぉりゃー!!!・・・(ズポッ)
    お!当たった!!俺、凄すぎやない。

こころ:今のは初速度が大きすぎたので反則です。

てんこ:・・・もうええわ。

③初期状態-裏

 今回の話は「スイング中の呼吸」です。そして、最後に重要となってくるのが初期状態となります。

 前の2回(4月号、5月号)とは直接関連ありません(全てのテーマは最後には一つに結び付きます)。同一のテーマを続けると、飽きてくる方もいるので、学校の時間割のように、色々なテーマを並行して扱っていきます。

 また、比較的わかりやすい回ですが、「意識のコントロール」の鍛錬を行う前に実行すると逆効果になります。なので、まずは話として理解し、実践はしばらく後にして下さい。

 

 スイング中とはアドレスから始動、そしてトップ、インパクト、フィニッシュまでの一連の動きの間のことです。

 このアドレスからフィニッシュまでの間で、呼吸をどうすべきかを考えていきます。

 

 簡単に、呼吸、筋肉、神経などをみていきます。

 呼吸の目的は言うまでもなく、必要な酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することで、人間では肺を通じて行われます。

 肺が膨らんだり、凋んだりすることでガス交換が行われています。しかし、肺はそれ自身で膨らむことはできません。

 横隔膜や肋間筋という筋肉が収縮、弛緩することで行われます。

  そして、筋肉自体も勝手に動くことはできません。 

 神経の支配を受けて、神経の指示で動いています。

 

 やや不正確ですが、大雑把にまとめるとこうなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簡単に説明すると、中枢神経は脳。首から下が末梢神経になります。

 そして、末梢神経に様々な筋肉がくっついています。

 運動神経は筋肉を動かす神経。

 感覚神経は痛みや熱さなどを伝える神経です。

 筋肉を動かそうという命令は脳、中枢神経から送られます。

 痛みや熱さの情報も中枢神経に伝えられます。

 腕や足は自分の意志で動かすことができるでしょう。

 これは脳で腕や足を動かそうとう指令を出して、運動神経が情報を伝達して、その筋肉を動かしているのです。

 自分の意志で動かせる筋肉は、運動神経がつながっています。

 一方、自分の意志では動かせない筋肉もあります。

 例えば、自分の意志で心臓を止めることができる人はいません。

 このように、心臓、消化管、汗腺などの筋肉へは自律神経がつながっています。

 そして、意識することなく、自動で脳からの指令で、自律神経を介してこれらの筋肉は調節されています。

 活動、興奮、緊張モードである交感神経優位の時は、心臓の鼓動や早くなり、消化管の動きは抑制されます。

 そして、呼吸は浅く、呼吸数は増加します。

 呼吸もこのように、普段は意識することなく、自律神経によって呼吸の深さや回数が調整されていることは共通です。

 

 しかし、唯一大きくことなるのは、呼吸に関しては意志によっても変えることができる点です。

 心臓の鼓動のペースや、消化のスピード、発汗の量を自分の意志でコントロールできる人はいないでしょう。

 呼吸に関しては、自身の意志によってもコントロールできる、というのが大きく異なる点です。

 自律神経→呼吸 へ影響を与えるだけではなく、

 呼吸→自律神経 へ影響を与えます。

 例えば、深呼吸をするとリラックスを感じる人は多いでしょう。

 これは、深く、回数が少ない呼吸は、自律神経に影響を与えて、副交感優位にしているのです。

 

 もう少し細かくみると、一回の呼吸の中でも、

 吸う→交感神経優位→筋肉収縮・気分緊張

 吐く→副交感神経優位→筋肉弛緩・気分リラックス

 

 という作用があります。

 このように、自分の意志で自律神経の状態を一定程度コントロールできるというのは、基本的に呼吸だけです。

 

 前置きが長くなりました。

 では、スイング中の呼吸についてです。

 

 スイングを三つの区間にわけます。

  区間Ⅰ アドレス~始動

  区間Ⅱ 始動~トップ

  区間Ⅲ トップ~インパクト~フィニッシュ

 

 フルショットの場合、呼吸はどのようにすべきでしょうか?

 現在、世の中には、ショット中の呼吸に関して様々な呼吸法が提唱されています。

 以下のようになっています。

 

  区間Ⅰ 区間Ⅱと逆(「吸う」の場合は「吐く」)を推奨

  区間Ⅱ 「吐く」、「吸う」どちらを推奨している場合もあり

  区間Ⅲ 「吐く」(ほぼ共通しており、かつ最も重要)

 

 では、呼吸を意識していない場合、どのようになっているのでしょうか?

 最も大事な 区間 Ⅲ に関しては、多くの人が意識をしなくても「吐く」になっています。

 ある程度の人は、「呼吸を止めた」まま スイングとなっています。

 何も意識せずに、区間 Ⅲ が 「吸う」 の状態になる人はいないと思います。

 

 では、区間Ⅰ、区間Ⅱ はどうなっているでしょうか?

 次の3つのケースが多く考えられます。

  ケース1 自然と上記推奨する呼吸ができている

  ケース2 息を止めている。

  ケース3 始動の時点での呼吸の位置がバラバラ

 

 呼吸を止めていると、筋肉は硬くなっていきます。

 ケース2の場合はアドレスから始動までの時間が異なると、始動の時点での筋肉の硬さはバラバラとなります。

 

 呼吸は

 

  吸う→交感神経優位→筋肉収縮・気分緊張

  吐く→副交感神経優位→筋肉弛緩・気分リラックス

 という作用があることをお話しました。

 

 これは、どのような意味を持つでしょう?

 「呼吸」の位置(吸う~吐くのどの位置か)によって、筋肉の硬さも異なることになります。

 

 同じショットを試みた時の、同一のアドレスが重要なことは明らかでしょう。

 アドレスの時に、スタンスの広さやアドレスの方向には十分に気を付けると思います。

 アドレスを見れば、成功するか失敗するかわかるともいわれている程です。

 

 ケース2やケース3の場合はどうなるでしょうか?

 「始動」の時点での呼吸の位置や、息を止めていた時間がバラバラなので、

 筋肉の緊張具合が揃っていない、筋肉の硬さが異なることになります。

 

 流石に、④初期状態-表 で見たように、槍とネギほどの違いはありませんが、違いがあるのは事実です。

 どんなに「いわゆる同じフォーム」で打っているつもりであっても、

 持っているクラブが異なれば、違う球が行ってしまいます。

 全身の筋肉の硬さや状態が異なれば、異なる球が行っても当然となります。

 

 +81 mind 状態 における スイング中の呼吸における基本的な考え方です。

 

  Ⅰ・・・スイング中は「呼吸」から意識を外す(呼吸のことは考えない)

  Ⅱ・・・ただし、「始動」までの間は、「呼吸」を「観察する」ことによって「呼吸の位置」を揃える

 

 以上となります。

 

 「スイング中の呼吸法」と言いつつ、結局呼吸は意識をしないのかと思われた方もいるかもしれません。

 世にある呼吸法を否定するつもりもありませんし、中にはそれなりの根拠がある呼吸法もあると思います。

 しかし、局所では正しくても、全体としては誤っているということは多々あります。

 これは日常の臨床場面でもよくみられます。例えば、眠れなくて困っている人が、①寝る前、数時間はPCなど強い光のものは見ないようにする②ゆるめのお風呂で半身浴をする③リラックスできる音楽を聴く④夕方以降のカフェイン入りの飲み物を控える⑤日中に適度な運動をする⑥寝る前にアロマを焚く などの方法を一度に開始したらどうなるでしょう。全ての習慣は今までなくて、眠れるように始めたものとします。一つ一つは有効若しくは少なくとも悪影響はないものであっても、一度に行うと逆効果になります。「不眠を治す行動」に意識が行き過ぎて、一つ一つはリラックス効果があるものであっても、逆効果になってしまいます。

 ②意識の働き裏 で 説明したように「意識の容量」は有限です。

 「スイング中の呼吸」に意識の容量を使うべきではありません。

 冒頭で、すぐに使える内容ではないと言った理由もここにあります。

 意識のコントロールや「観察する」という意味を理解し、実践できるようにならないと、

 スイング中に変に呼吸を意識してしまって、逆効果になってしまうのです。

 スイング中は呼吸に「意識の容量」は使わずに、ただし、「始動」まで呼吸を「観察する」ことによって、筋肉の硬さ等(等と書いたのは、筋肉の硬さが話としてわかりやすいので挙げましたが、揃うものは他にもあります)、の初期状態を揃える。これが結論となります。

 これが結論であれば、長々と説明した本稿が無駄かというとそうではありません。

 「フォームについて・好不調が生じるメカニズム(仮)」

 という非常に大切な回の理解の前提の一つとなっています。

 ぜひ、ご期待ください。では、今回はここまで。

 

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④自分の範囲-表

てんこ:こころ、えらい急いでんなあ。

ゆめた:うん。全速力で一直線。こっちくる。

てんこ:おーい、危ないで。止まりや~

ゆめた:・・・聞こえてない。

てんこ:(ズドン!)・・・いててて。

こころ:今、ゆりりちゃんと待ち合わせをしてて、凄い急いでました。

    てんこのこと、全然見えてませんでした。ごめ・

てんこ:ちょっと待てや!そっちからぶつかっておいて謝罪もなしかい。

こころ:はい!?なんて言いました!?

てんこ:一方的にぶつかってきて、謝罪もなしかって聞いとんねん。

こころ:・・・・・・・・

    ぶつかってません。

てんこ:は~???

ゆめた:こころ、てんこにぶつかった。

こころ:いえ、てんこが私にぶつかったかもしれません。

てんこ:はぁ。ずっと俺はここで止まっとったで。

    この、場所で!このドアの隣。

    周りをみてみろや。みんな止まっとって、こころだけは走っていたやろ。

こころ:数の暴力ですね。

    てんこ、ゆめた、みんなが走っていて、私だけ止まっていたのかもしれません。

    止まっているって何だと思いますか?

ゆめた:こころ、てんこにぶつかった

てんこ:そうや、俺は北緯34.7度、東経135.2度、標高1mのこの地点に止まってた!

こころ:物事を一から考えるくせをつけた方が良いですよ。

    それだと、てんこと地球が私にぶつかってきたかもしれないじゃないですか?

    しょせん、地球基準です。

    てんこ、普段から地球におさまらない、宇宙一の男になるって言ってますよね。

てんこ:まあ、そうや。じゃ、宇宙の座標で考えてもええやろ。

こころ:無理です。宇宙は伸び縮みするんです。

    今、宇宙は膨張中ですよ。しかも複数宇宙があるという説も有力です。

    宇宙自体が伸び縮みして、動いていたら、座標なんて決まらないです。

    無の空間を想像してみてください。

    そこで、自分が静止している状態を想像してみてください。

てんこ:なんとなく、できた気がする。でも、難しいな。

ゆめた:こころ、てんこにぶつかった。

こころ:そうです。難しいんです。実際、無理なんです。

    無の空間で、一定速度で動いていようが、止まっていようが区別つかないんです。

    そこに、もう一人いればその人との距離は定まります。

    でも、どっちが動いているかはわからない。

    二人が近づいているのか、遠ざかっているのかしか決まらない。

    つまり、二人の間で決まるのは「相対速度」だけなんです。

てんこ:おー、なんかわかった気ぃする

こころ:太陽が地球の周りを回っていると考えられていた時代が終わったように、

    絶対空間が信じられていた時代も終わりました。

    今、絶対的なものは、誰から見ても変わらない光の速度と、子供や次世代への愛だけです。

てんこ:おー なんか、悪かったな。

こころ:いえ、いいです。別にてんこがぶつかったなんて言ってません。

    どっちがぶつかったかなんて、決められないって言いたかっただけですから。

てんこ:わかった。こころは大きいやつやな。

ゆめた:こころ、てんこにぶつかった。

    ところで、ゆりりちゃん待ってる。

こころ:あー!!!どうしよう(涙) 

    どうすればよいかな???

    時間も絶対的じゃなくて、固有時間があって・・・そして・・・そして・・・

ゆめた:素直にあやまる。

④自分の範囲-裏

 本日のテーマは「自分の範囲」です。5月号②意識の働き-裏 からの続きとなります。

 今回の「表」とのつながりは、「常識を捨て、思考実験を行う」ということになっています。一方的にぶつかっても、どちらがぶつかったかは、実は決められない、その位常識をすてて、「自分の範囲」について考えましょうという回になります。すると、次の質問の答えが出てきます。

 コースや本番で、緊張していると感じた時、どうその緊張に向き合うのが良いでしょうか?

 ①緊張しないと自分に言い聞かせる

 ②緊張している自分を否定せずに、受け入れる

​ ③緊張がただそこにあると認識する

 ④緊張のことは無視して、他のことを考える

 今回はやや難しく、また回りくどく感じるかもしれませんが、理解の深さによって、実践的に大きく差が出ると考えているところです。ぜひ、ご覧ください。

 まずは、簡単なエクササイズから。

 エクササイズ1

 ①テーブルの上に腕を置く。

 ②-A 腕の重さを感じる。(10秒間)

 ②-B 筆箱やリモコンなどを腕の上に置く。

    その重さを感じる。(10秒間)

 どうだったでしょう?Bができない人はほとんどいないと思います。Aは同様に簡単な人もいれば、かなり苦手で難しかった人もいると思います。

 どちらも知覚の一つである運動感覚(重量覚、抵抗覚)になります。重量覚とは体に加わるものの重さを把握する、抵抗覚は体に加わる抵抗を把握する感覚です。

 このAが苦手な人は、「自分の身体」がどこまでかということに、疑問を持たずに硬直している人が多い印象を受けます。ぱっと読んでも、何を言っているかわからない人も多いと思います。

 では、わかりやすく、「自分の身体の範囲」はどこまででしょう?

 爪は?髪の毛は?唾は?これらは「自分」ですか?

 爪切りをして、切り離された爪を「自分」と思う人は少ないと思います。

 では、爪切りの途中で切り離される途中の爪は「自分」でしょうか?

 唾はいかがでしょう?口の中にあるものは?外に出したら?それを飲み込んだら?

 「自分」と「自分以外」の基準は何でしょうか?

 血液はいかがでしょう?骨はどうでしょうか?

 自分の意志で動かせるか、どうかが基準になるでしょうか?

 腕の筋肉は動かせると思いますが、心臓の筋肉を自身の意志で動かせる人はいないでしょう。

 少し不謹慎ではありますが、自身の右腕が突然切り離されたらどう感じるでしょう?

 右腕がなくなったと感じる人がほとんどでしょう。

 右腕の重量分、約5%の自分が失われたと感じる人はどの位いるでしょうか?

 少なくとも、重量が重要ではないのは明らかです。

 首の部分で突然切り離されたら、どう感じるでしょうか?

 (思考実験なので、どちらも生存しうるとします)

 頭と首がなくなったと、感じる人は少数でしょう。

 首から下が無くなったと考える人が多いと思います。

 では、自分とは頭部、もしくは脳のことでしょうか?

 首から下は、切り離されると自分ではないけど、つながっている限りは自分なのでしょうか?

 つながっているとは、皮膚が基準でしょうか?神経が大事なのでしょうか?

 さきほど、自分の意志で動かせるかどうかは関係なさそうでした。

 このように堂々巡りになってしまいます。

 実際に、色々な視点により「自分の身体の範囲」というのは変わってきます。例えば、発生学的に考えると、口から肛門までの腸管(胃や腸)の中は体の外です。鉄壁の防御力を誇っているかに感じる皮膚に関しても、原子や分子のミクロの視点では空間が存在しています。

 つまり、「自分の身体の範囲」というのは、多くの人が認識しているよりはあいまいです。

 これが「自分の身体の範囲」はどこまでか?という問いに対する答えです。この答えにはがっかりした人もいるかもしれません。しかし、問い自体がそもそも間違っている、唯一の解が存在しないものなので仕方ありません。ただ、自分の身体を「範囲はあいまいなものである」「何か自分という何らかの安定した不変の存在があるわけではない」と捉えることができるという考え方自体は重要です。例えば、自身の腕を、自分の腕というより、「骨」と「肉」の塊と捉える。皮膚を観察して、ほくろや傷やしみなど普段認識していなかったものをみつけて、「本当に自分の腕なのか?」と違和感を覚えてみる。もっとダイレクトに腕から先を自分のものではないと捉えてみる。このような条件で、先ほどのエクササイズ1のAをしてみください。元々苦労なくできた人は変わらないと思いますが、苦手だった方の中には腕の重さを実感できるようになった方がいるはずです。

 さて、今回のテーマは「自分の範囲」です。実はより重要なのはこれからです。「自分の精神、心の範囲」はどこまででしょう?自身が認識した、思考や感情は自分だけのものと言い切れるか?と言い換えても良いです。ひとまず、ここで言う精神、心とは一般用語のそれで、広く捉えてください。

 心とは何でしょう?どこにあるものでしょうか?魂、霊的なもの、神様が人間たるために与えてくれたもの、というように捉える人もいれば、脳の働きの一部、まだ解明はされていないが、脳の一部もしくは全体で起こっている物質の反応、と捉えている人もいるでしょう。ここでは後者の立場を取ります(後者の立場を取ると、昔から意思は存在しえないことになるなどの理論はありますが、ここではいったん脇に置いておきます)。脳を構成する主役は神経細胞です。1000億個近い細胞の集まりが脳を形成しています。神経細胞同士はシナプスでつながり、複雑なネットワークを作っています。一つの神経細胞は活動電位による信号として、情報が神経終末まで伝えられます。そして、次の細胞へは神経伝達物質を介して情報が伝わります。その繰り返しで、情報が伝わります。近年、この研究には目覚ましいものがあります。しかし、最後の部分、解明されてきた物質の変化がどう「心」に結び付いているのか、どう変換されるのかに関してはわかっていません。しかし、後者の立場をとると、これらの反応、「脳の中の物質の変化」が「心」だ、ということです。以降は話をわかりやすくするために、神経伝達物質、神経細胞の脱分極、再分極、などその他すべてを「脳の中の物質の変化」とまとめたいと思います。

 前置きが長くなりました。心が「脳の中の物質の変化」だとすると、心はどこにあるでしょう?認識した心のうち、自分のものと言える範囲はどの位でしょうか?この前提では、心のある場所は脳の中となりそうです。しかし、もしも場所が脳と特定されると、先ほどと同じ議論で、自分の範囲はあいまいとなりそうです。しかも実際に、外部から脳の中の物質の変化を起こす手段はあります。一例として、精神科の治療では、電気けいれん療法やTMS治療と呼ばれるものがあります。電気や磁気を加えることによって、脳の中の物質の変化を起こすことができるのです。ここからは思考実験ですが、仮に持続的にかつ大幅な脳の中の物質の変化を引き起こす機械があったとします(これは既に存在しているものを考えると、実現可能性はあります)。この作用を常に受けている中で、生まれた考えというのは、自分のものでしょうか?例えばこの機械の作用を受けている時に、人を殴りたくなって殴ってしまったら自分の責任でしょうか?例えば、この機械が極めて強力になり、元来の脳の中の物質の変化の与える影響が極めて小さくなったらどうでしょう?作られた映像を見せられているのと何が違うでしょうか?「脳の中の物資の変化」が「心」だとすると、その「心」は自分ではなく、その強力な機械だと言えるのではないでしょうか?自然現象による影響はどうでしょうか?極端に強力な磁場を発生した地点があったとします。すると、機械で起こしたものと同様の現象がおきるでしょう。一つの神経細胞からすると、それが人工的な作用か、自然の作用なのかはそもそも意味をなしません。すると、極端ではない、通常の自然環境も大なり小なり、自身が自分の「心」だと思っているものに入り込んでいる可能性は否定できないでしょう。

 先ほど、「自分の身体の範囲」はそう認識しているよりあいまいだ、という結論を出しました。「心の範囲」もあいまいであり、認識した「心」は自分のものか、そうでないのかわからない、というのが結論です(厳密にはそう言い切れるほどにも「心」に関してはわかってはいないのですが。ここは心とは何かを解明するのが目的ではないのでこう結論します)。

 つまり、生じた気持ちというのは、認識できたとしても、自分のものか、外部のものかわからない、ということになります(もちろん、私も認識した心は自分のものだという直感からは完全には逃れられていません)。わからないのであれば、仮に自分のものではない、ということにしてしまおう、というのが基本的な考え方になります。正確には自分の内部か外部かの判断すら意味のないものなのでやめて、ただそこにあるものと認識しようということです。プレイの直前に「緊張した」と感じても、その心は自分のものではありません。だとしたら、どうこうしようとするでしょうか?拒絶も、否定も、修正も、受容もしません。ただ、そこにあるので、単にそう認識、観察するのみです。ようやく、ここまでたどり着きました。冒頭の問いに対する私の考えは③です。①は逆効果となる場合がほとんどです。②は一見似ていますが、非なる考え方です。③と比較して、使用する意識の容量(5月号②参照)が大きいです。④は多少アレンジすれば使えますが、このままでは逆効果となる場合が多いです。この③を結果のみの実行ではなく、理解して行うことができるようになれば、それ自体でプレイの質は変化します。実際にどうすれば、この精度を高めていけるか、またさらにその先はどうしていけばよいか、これはまたいずれ。

 

 

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⑤意識の置けるもの-表

こころ:ゆめた~ てんこ~

てんこ:お、こころ。そないに興奮してどうした?

ゆめた:うん、興奮してる。

こころ:聞いてください。この『初恋mind』って本、素晴らしいんです。

    読みますね。

 

    二人は恋人同士だった。

    他の誰から見ても・・・

    そう見えてないのは、当人達だけのように思えた。

 

    はるは隆と幼稚園からずっと一緒だ。

    はるが初めてケンカしたのは隆だった。

    キッズケータイの登録番号1番は隆だった。

    中学校、一緒に学級委員をしたのも隆だ。

 

    中学3年生の夏祭り、当然隆と一緒だった。

    ずっと前から約束していたのか、もしくは約束してすらいないのか、

    当たり前のように隆と一緒に花火を見ていた。

  

てんこ:・・・こっちの事情お構いなしやね。
    よぉ人が聞いてへんのに・・・
ほんま、聞いてほしいと思うてるのかな?

ゆめた:・・・

てんこ:ほら、やっぱり、ゆめた寝とる。
    こころ~ ゆめた寝てんで。

こころ:え!?なんでですか???

    こんなに、面白いのに。

    ゆめた~ ちゃんと聞いてください。

ゆめた:いいから、早く続きを読め。

    はる、どうなるんだ?

    やっぱり、打ち上げ花火で告白か?

てんこ:・・・え?
    なんで、わかるん?

ゆめた:当然だ。バクは集中して聞くときは寝る。

てんこ:ほんまに?世界中のバクに失礼ちゃう?

こころ:そんなことより、聞いてください。

    続き、いきますよ。

 

    花火もいよいよ、最後。

    はるは、空を覆いつくす、しだれ柳が圧倒的に好きだ。

    色は黄金色、単色がいい。

    煩かった喧騒も、一緒に闇夜に溶けていく、

    その儚い瞬間がたまらない。

    隆は言った。

    「告白されたんだ。俺、さきと付き合おうと思う」

    「・・・え。そうなんだ。おめでとう。よかったね」

    はるは頬を伝う涙によって、はじめて自分の気持ちに気づいたのだった。 

 

こころ:ね、どうでした?泣けますよね。

てんこ:そうかな。どちらかっちゅうと、好きやないな。こんなベタな展開、あるかな?

    っちゅうより、今どき、こんな中学生いるか?全く共感できへん。

    俺、好きやないっちゅうより、嫌いやな。

こころ:・・・そこまで言いますか。

              だって、はるは、隆のことをずっと友達として好きだったんですよ。

              そして、隆が告白されたのを聞いて、そこで初めて恋愛感情が生まれたんです。

              なんか、切ないですよね。

              もっと前から、隆のことを異性として好きなら、展開が変わったかもしれないのに。

てんこ:こころ、もっと人の心を勉強した方がよいな。

    はるは、もっとずっと前から隆のこと、異性として好きやったよね

こころ:え、そうなんですか?だって、はる自身の言葉でも、異性としては好きじゃないって。

てんこ:そりゃ、自分でも気づいておらんかったら、そうなるやろ。

    好きっちゅう感情があっても、気づかないってことあるやろ?

    もちろん、ちゃんと向き合えれば気づくのかもしれへんけど、

    初恋でちゃんと恋愛感情を知らんかったら気づかないこともあるんちゃう?

    せやから、身体は反応し、最後は涙に・・・

    気持ちが存在していても、意識せんと自分の感情にも気づかへん。

    って、なんでこんな真面目に解説せんならんのや。こっちが恥ずかしくなる。

    こころやって、ゆりりちゃんのこと好きだっていつ気づいた?

こころ:え、わたし、別にゆりりちゃんのこと何とも思ってないですし。

    ゆめた、どう思います?

ゆめた:・・・

てんこ:あ、まだ寝とる。ほんま、聞いてるのかな?ゆめた?

ゆめた:あ、いい話だったな。

こころ:本当ですか?

ゆめた:やっぱり、SDGsは大事だ。

てんこ:うん、そんな話でもあれへん。

⑤意識の置けるもの-裏

 今回は、④の自分の範囲-裏の続きです。

 意識は「思考」「感覚」に置くことができる。

 意識が置かれた時に人間は認識することができる。

 ただし、意識の容量は有限である。ということを見てきました。

 他にはどんなものにおけるでしょうか?

 「身体」がその一つです。早速エクササイズを一つ。

 

エクササイズ1

 ・姿勢は自由に

 ・目を軽く閉じる

 ・手・足・お尻など接している面の感覚に意識を向ける

 ・右手の重さを感じる

 ・左手の重さを感じる

 ・両手の重さを感じる(右手→左手→両手と意識が移ります)

 ・頭の先から足の先まで全身をスキャンするように意識を移動させる

 (意識を向けた部分がリラックスをしているか、痛みやこわ張りは感じるか?)

 

 さて、いかがだったでしょうか?

  手、足、お尻など身体の各部位に意識を置くことができたでしょうか?

 スキャンするようにスムーズに意識を移動させることはできたでしょうか?

 緊張やリラックス感や痛みや肩こりなどを感じることはできたでしょうか?

 これらは、他の部位をスキャンしている時は、感じなくなったでしょうか?

 慣れれば、重さだけではなく、手足の温度なども感じることができるようになります。  

 

 ④自分の範囲-裏でみたように、「身体」に関しても「自分の中」や「自分の外」など判断をせずに、ただそこにあるものとして、スキャンしていく(意識を移していく)のがポイントです。実はこの感覚は、「気持ち」、「身体」の他、全ての領域においても同様です。このように、「身体」に意識を置く際に、自分の内側、外側を判断することはしません。逆に、自分の外側のものでも、同様に意識を置くことができます。その代表が、「空間」「場所」です。

 

 これは、意識せずともやっている場合が多いです。ゴルフに限らず、ショットの際に「ここに向かって打とう」と考えた際に、行っているものです。何となくピンとこない方のために次のエクササイズを。

 

エクササイズ2-1

 ・立った状態から、床にある目標を定めてジャンプします。

 →ジャンプする直前の意識の状態を認識してください。

 これが、「意識」が「空間」に置かれた状態です。

 

エクササイズ2-2

 →自分が魔法使いであると想像してみてください

 →壁の向こうに超小型小規模爆弾をしかけます。

 →そして、その爆弾を爆発させます。

 

 この爆発の直前も「意識」が「空間」に置かれた状態です。

 さて、この例で重要なのは、意識を置く空間が「事実に基づいた空間」(この「事実」というのも、正確に考え出すときりがないのでいったんやめます)である必要はないということです。壁の向こうの部屋を知らなくても、まったく想像と異なる部屋でも意識は置けるということです。

 

 このように、意識は「身体」「空間」にも置けることがわかりました。

 さらに、今回の⑤意識の置けるもの-表 で見てきたように、「感情」にも置くことができます。

 

 「嬉しい」「悲しい」「好き」「不安」「緊張」「恐怖」などの感情は、一見生じた瞬間に認識しそうなものです。しかし、実際は今回⑤意識の置けるもの-表 で見たように、他と同様に意識をおかないと認識でできません。「好き」という感情が存在したのは、いつからかはわかりませんが、少なくとも「はる」自身が認識したよりずっと以前でしょう。

 

 ここで、2つポイントを追加。

 

 1つ目はこの⑤意識の置けるもの-表の物語の主人公二人が30代で同様のシチュエーションならいかがでしょう?

 この物語の稚拙さは置いておいて、より共感は下がるでしょう。

 「自分の気持ちに気づかないはずがない」「経験として、知っているからわかるはずだ」となるでしょう。

 ポイントはここです。

 裏を返すと「知らない」と意識を置きにくいということです。

 「感情」とは何か?「運動感覚」って何だろう?

 このあたりを知っているか、知らないかで意識を置く容易さは変わっていきます。

 この辺りは、今後説明予定です。

 

 2つ目は「好き」という感情に意識を置かないと気づかないのであれば、試合で緊張をしていることにも、気づかなければ大丈夫ではないか?影響がないのではないか?という疑問は生じると思います。残念ながら、そうはなりません。認識しているか、否かに関わらず、「緊張」という感情が存在するだけで影響は出ます。その説明の一つが、「否認」と呼ばれる精神の防衛機構の一種です。

 否認とは現実を認めてしまうと不安・恐怖などに耐えられないために、現実の一部又は全部を現実として認識することを自身の意志を介さずに拒絶するものです。知覚は実際にしているものの、認めないということです。つまり、緊張していて、実際にその緊張は本来認識しているのですが、その認識している部分を自分としては無意識に拒絶してしまっているため、緊張しているのに気づかないということになります。実際は緊張しているので、身体には影響は出るし、いったん知覚しているので、「意識の容量」も使用します。

この「否認」は程度の差はありますが、誰でも普通に行われていることです。

  

 ②意識の働き-裏 で 見たように、意識の容量は理論的な最大値126ビットは通常使用できず、心的エントロピーによって減少すると話しました。まさに、この認識されていない緊張などはこの心的エントロピーにあたります。認識している、又は認識できていない、「不安」や「緊張」そして、それに伴う「思考」、これらが心的エントロピーのメインになっています。

この対策に関しても今後やります。

 

 今まで見てきたように、意識は「思考」「感覚」だけではなく、「感情」「運動」「空間」などありとあらゆるものに置くことができます。そして、「意識の容量」を使用するという観点では、このバラバラにみえるこれらが同質で容量を取り合います。これは次回より詳しく見ていきます。今回はここまで。

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⑥同じスイング-表

こころ:3人でゴルフ、久しぶりですね。

てんこ:本当や。気持ちええな。

ゆめた:うぉー

こころ:ゆめた、ナイスショット!

              何で、ゆめたは何も考えてないのに、あんなに良いショット打てるのでしょう?

てんこ:・・・え?

    それ、こころが言う?

    ショットの真髄は、何も考えんと打つことって言うとったやん・・・

こころ:そうでした。すっかり忘れてました。

    何も考えずに、無心で打つ。これがゴルフの真髄です。

    何も考えないで打つために、色々考える。

    楽をするために努力する。

    この矛盾。ゴルフは人生そのものですね。

ゆめた:ふん!

てんこ:あ、ナイスオン。

    ゆめたは、絶対初めから何も考えてへんけどな。

              じゃ、俺も。

    トュル・ル・コーン!

    わー、ダフった。なんで~?

こころ:右足に体重が残ってましたね。

てんこ:それが原因か~

ゆめた:てんこは右足に体重を残して打ったんじゃないのか?

てんこ:そんなわけあらへんやろ。
    残り100Y。平坦で、ライも最高。なんでグリーンに乗りもせぇへんやろう。
    練習場やったら、10球中9球か10球は乗ってんで。

こころ:練習場でも右足に体重が残るんですか?

てんこ:そんな、ショートアイアンで残らんやろ。練習場なら完璧やで。
    よし、今度は同じ原因で失敗せんように、しっかり体重を左足まで移動しよか!

ゆめた:本当に、右足に体重が残ったのが原因か?

てんこ:原因やろ。

    ダフる理由のほとんどは右足に体重が残ることってみんな言うとんで。
    ほんで、実際に今、ゆめたもこころも右足に体重残っとるん見とったやろ?

こころ:う~ん、それはあまり理論的ではないですね。

    ・・・! ゆめた、さすがです。考えてないようでちゃんと考えてたんですね。

ゆめた:何をだ?

こころ:てんこが右足に体重が残っていたというのは、結果であって原因ではありません。

    てんこは、右足に体重を残さず、左足まで体重移動をしようと思っていました。

    知識不足ではありません。

    平坦で、ライも最高であり、地形の問題でもありません。

    練習場ではほぼ成功していて、再現性の問題、つまり練習不足でもありません。

てんこ:何が原因やねん?
    もったいぶらんと教えてくれ!

こころ:そうはいきません。今日は久々にてんこに勝ちたいんで。

    そうとわかれば、私はグリーンオンではなくて、カップインを狙って・・・

    ・・・えい!!!

ゆめた:ようやく打ったな。

    グリーン行こう。

こころ:手ごたえありです。

てんこ:・・・なんや、誰もグリーン乗ってへんやん。

こころ:あー、なんであんなところに私のボールが。

てんこ:明らかに欲にまみれすぎやろ。
    せやけど、ゆめたまでグリーン外すとはやっぱこのホールはややこしいな。

ゆめた:・・・オレ、カップインバーディー。

⑥同じスイング-裏

 今回は前回の知識を使いますが、基本は独立した回でショットについてみていきます。⑥同じスイング-表 で見たように、「右足に体重が残る」→「ダフる」という現象があったとします。この「右足に体重が残る」というのは、「ダフる」の原因となっているでしょうか?そもそも右足に体重を残して打とうとした場合はその通りでしょう。又は、右足から左足に体重を移動させるという正しい(かどうかは、専門外なので確実とは言えませんが)フォームが練習不足で身についていない、その方法を知らないなどもこれに準ずるでしょう。勾配やライなど、地形の状況に応じた打ち方を知らない、これも知識不足、経験不足になりますが、これに準ずると思います。しかし、多くの場合これらはわかっているはずなのに・・・と感じる方が多いのではないでしょうか? だから、「ミスショットをした」と思うのです。「練習場ではうまくいくのに」「体が勝手に残ってしまう」「同じように打っているはずなのに」このように感じる方は多いでしょう。

 ③初期状態-裏 で見たように、筋肉は脳からの神経の支配を受けて動いています。

⑥-裏-①_page-0001.jpg

 つまり、筋肉は勝手に動かないし、身体は勝手には動きません(膝蓋腱反射など除く)。全て脳からの指令を受けて動くのです。この脳からの指令と言うのは、意識して指令を出す場合もあれば、意識下で指令を出す場合もあります。ただし、どちらの場合でも筋肉が勝手に動くわけではなくて、脳からの指令で動いているのです。

 つまり、「脳」にアプローチしないと、このミスショットが無くなるわけはないのです。「同じフォーム」で打っていれば、「同じ球」がいくはずです。違うフォームになっているので、結果が異なります。筋肉を動かす指令を出している脳、そしてその「意識」の状態が異なるためにこのような違いが出てきます。では、もう少し詳しくどのようなことが起こっているのか様々なケースで見てみましょう。対策については、詳しく今後別の章で解説していきます。

⑥裏②_page-0001.jpg

 Case 1は単純だが、頻度が高いケースです。コースで緊張してしまい、そのため心的エントロピー(⑤意識の置けるもの-裏参照)が増加したものです。「同じ打ち方をしたはずなのに、失敗した!」とコースで感じた場合などがこれに当たります。次のケースも見てみましょう。

⑥裏裏③_page-0001.jpg

 Case2 は意識することが多すぎるケースです。①トップでしっかり右足に重心をのせよう②軸はインパクトまでしっかりキープしよう③左右にぶれず、その場で腰でしっかり回転しよう④フィニッシュではしっかりと左足に重心をのせよう⑤トュル・ル・コーン!のリズムで振ろうということを意識しようとしたとします。すると、これらをしっかりしようと、アドレスから始動までは順番にこれらを思い出します。①を確認して、②の確認に移る。これは意識の転換と言います。そして、②を確認したときに、①を忘れてしまっては意味がないですから、①は意識に乗せたままにしようとします。これは意識の維持と言います。③の確認をした時には、①②③、全てが同時に意識に乗っていないといけません。同時に意識に乗っていることは意識の分割と言います。これを表したのが上の図となります。Case2 を見てどうでしょう?意識の維持、分割、転換をトレーニングしていない状態であっても、これは無理そうだなと感じるはずです。ただ、失敗を修正しようとして、このような状態に陥ることはあります。なので、上の図では可能なものとして書きましたが、実際にはどこかで意識の容量をオーバーしています。

 個別では、例えば、リズムや音楽に合わせて振る、というのが正しくても、全体としては失敗してしまう、「正しい個別の戦術も、たくさん合わせると、全体の戦略としては誤っている」例とも言えますね。

 次の例は、直前の失敗を修正しようとその意識が強くなりすぎた​ものです。普段は軸をしっかりキープしよう、左足まで重心をしっかり移そうという二つしか意識していなかったとします。右足に体重が残ってしまったショットの後、それを修正しようと意識が強くなりすぎたケースを見てみます。

⑥裏④_page-0001.jpg

 前回の失敗を修正するために、普段以上に「左足にしっかり体重を移そう」という意識が大きくなってしまい、容量をオーバーしてしまうものです。これと同じものと分類されるケースには、「右側にだけはいきたくない」というような場面で失敗してしまうというものも当たります。

 試合の当日や一定期間に関しては、「前回の失敗を修正する」というのはすべきではありません。「ただ同じことを継続する」べきだと思います。一流のアスリートの中には「自分のやるべきことをやり続ける」「一打、一打に集中する」というような内容の発言も多いと思いますが、共通する文脈だと思っています。

 ただし、そうは言っても、直前の失敗と言うのは強く頭に残るものです。次善の策としては、そのことを意識してしまうのは仕方のないことなので、普段意識している他のスイッチを切るというのもやり方の一つです。

⑥裏⑤_page-0001.jpg

 あくまで、これは次善の策であり、同じことを継続する、これが最善だとは思います。では、何も考えないでショットをすればこのようなばらつきから解放されるのでしょうか?ただ、「ぶーん」とスイングをしているだけ、というのは可能でしょうか?このような状態が達成されることもあると思います。+81 mind 状態が一例でしょう。しかし、実際には意識を占めてしまうものはあります。例えば、「運動感覚」です。意識というのは、自らの意思で置くこともあれば、自らの意思とは関係なく置かれてしまうものもあります(置かれてしまうのが、必ずしも悪いわけではありません。それによって咄嗟に反応できる場合もあります)。意識を占めるという観点からは、「思考」も「感覚」も同質に意識の容量を取り合います。ゴルフのスイング中における、運動感覚とは以下のようなものが例に挙げられます。①クラブとボールはどのくらい離れているかの感覚 ②身体の軸や腕の角度の感覚 ③スイングの速度、加速度 ④重心が乗る感覚 などです。これらは意識下で処理されている場合もあれば、意識に上ってくることもあります。これらは自分の意思で認識することもできますが、自らの意思によらない場合も多いでしょう。その他にも「思考」が意志とは関係なく、生じてしまう場合もあります。つまり、意識を「ぶーん」だけで占めて、他は一切使わずにスイングしよう、というのは困難だと言うことです。普段は様々なもので意識を占められたとしても、それに捕らわれず他に移す(転換)ことによって、スムーズなスイングをしているのです。なので、この意識の転換や分割や維持のトレーニングというのは必要になります。これが鍛えるべきは「脳」であるという意味の一つになります。

 ここまで見てくると、「同じフォーム」で打っているつもりが、結果はかなり異なるものだと言うことに気づくと思います。ただ、本来「同じフォーム」であれば、「同じ結果」であって欲しいものです。すると、必要になるのは、「フォーム」の再定義です。

以下のエクササイズを。

 

エクササイズ1

 なんらかのボールとカゴを用意します。

 (望ましくはないですが、ティッシュとゴミ箱でも構いません)

 カゴを1m程度の場所に置き、ボールを用意して座ります。

 肩から肘までは動かさずに、肘関節と、その下(遠位)のみを動かします。

 (肘は曲げてオーケーです)

 ボールをカゴに投げ入れます。

 そして、ボールがカゴに入る際の、肘の曲がる角度や腕の振りのスピードを覚えます。

 また、カゴの位置も覚えます。ここまでで準備は完了です。

 A:目を閉じて、先ほど覚えた肘関節の角度や、腕の振りのスピードでボールをカゴに投げる

 B:目を閉じて、先ほど覚えたカゴの位置に、ボールを投げる。

 

 結果はどうでしたか?あまり変わらなかったと思います。

 Aは身体の運動に、Bでは空間に意識を置いたことになります。

 専門的にはAは内部意識、Bは外部意識という言い方になります。

 では、フォームAとフォームBは一緒でしょうか?

 答えはNOです。このエクササイズレベルであれば、おそらく結果はそこまで変わらないでしょうし、第三者から見たフォームも一緒でしょう。しかし、私のフォームの定義ではこの二つは異なります。

 筋肉の数は600-700個位あると言われています。これらが、脳の指令によって、収縮、弛緩して、「運動」を作り出しています。一つの関節についている筋肉は一つという単純なものではありません。つまり、「腕を曲げろ」「あの空間にボールを投げろ」など脳の指令の仕方によってどの筋肉が反応するかは異なるのです。エクササイズ1レベルの実験であれば結果は変わらないと思います。しかし、スイングは全身の筋肉を使います。かつ、ゴルフクラブとうい長い道具を使い、小さなゴルフボールを打ちます。小さな違いが、大きな結果の違いに結び付くのです。

 1つの論文を紹介します。

 立ち幅跳びの実験です。何も指導しない群、内部意識群(膝をしっかりまげて、しっかり伸ばすなど体の内部に意識を向けさせた群)、外部意識群(遠くの目標に向かって飛ぶように、外部の空間に意識を向けさせた群)に分けます。そして、立ち幅跳びを行います。すると、有意に外部意識群の成績が良かったのです。実は、外部意識と内部意識を比較した論文は数多く見られます。そして、ほとんどの論文で、外部意識は内部意識に比べて、パフォーマンスが良好であったという結果が得られています。これはスピード、距離だけでなく、正確性においても当てはまっています。

 ゴルフであれば、「トップの位置はここだ」「左足までしっかり体重移動しよう」というのは内部意識、「ピンに意識を置いて打つ」「パットで想像上のゲートに意識を置いて打つ」というのは外部意識になります。

 では、ゴルフのフォームも外部意識にした方が良いのでしょうか?私の言いたいことはそこではありません。有意にパフォーマンスが良好であるというのは、結局はマスで比較した話なので、N=1 の個人には当てはまるかどうかはわかりません。向き不向きもあるでしょう。言いたいのは、一般的な意味でのフォームの指導もなしに、「意識の置き方で結果が変わる」ということです。テニスや野球であればある程度の不確実性は有利に働くこともあるでしょう。しかし、ゴルフは他のスポーツに比べて、再現性が重要です。同じフォームで打って、140ヤードのつもりが、145ヤードになって嬉しいでしょうか?「結果が変わる」ということは「フォームが違う」ということです。「この場面は右だけにはいかないように意識しよう」「同じフォームで、軸だけはぶれないように、いつもより気を付けよう」

「ここを失敗したから今度は失敗しないようにここを注意しよう」「練習場では型を固めて、コースではリラックスして方向を意識しよう」これらは、違うフォームで打っているようなものです。練習場とコースで異なるフォームで打っているのであれば、何のために練習をしているのかわかりません。「意識の置き場所」を含めての「フォーム」です。

 コースではその風景の壁紙を想定して打つことがあるというプロの話を聞いたことがあります。普段、室内練習場で練習することが多い方は外部意識で打つ場合にはそれが有効なことが多いと思います。もちろん、室内練習場で、リアルな空間をイメージしてもオーケーです。(⑤意識の置けるもの-裏 で見たように、意識は事実とは異なるものにも同様に置くことはできます)

 意識の置き方も含めて、フォームの一部とする。このフォームの定義を変えるだけで、変わってくる部分はあると思います。もう少し深く見ていくと、スランプ脱出法や好不調のメカニズムにつながりますが、これはまたいずれ。そして、「フォーム」とする範囲はもう少し広げた方が良いと思っています。それもまたいずれ。

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⑦+81 mind 全体像-表

こころ:楽しみですね~ 久しぶりですもんね。

ゆめた:うん、たのしみ。早く、会いたい。

こころ:げんじさんも良くオーケーしてくれましたよね。

ゆめた:槍、作るの、見たい。

てんこ:それにしても、えらい遠いな。ちょっと休もうや。

こころ:だめです。

ゆめた:げんじさん、槍作り始めちゃう。

てんこ:なんや、二人、めっちゃテンション高いな。

    槍ってあれやろ? 

    最近、やる人がほとんどおらん競技で使うっちゅう。

ゆめた:エルガノスピア!

こころ:そうです。伝統競技です。

    もう、槍を作れる人、げんじさんしかいないんです。

    げんじさんは、オランウータン界の、いやむしろエルガノ村の長老なんですから、

    失礼の無いようにしてくださいね。

てんこ:わかった、わかった。このまま行こか。

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こころ:げんじさん、ご無沙汰してます。

げんじ:はるばる、よくきたな。

ゆめた:お久しぶりです。お土産です。

げんじ:おー、ドリアンか。わしの好物じゃ。

    ありがとな。

てんこ:はじめまして、てんこです。

    あ、ウイスキー、

    この華やかな香りは珍しいでんな。

げんじ:げんじじゃ。よろしくな。

    おぬし、わかるな。

てんこ:ありがとうございます。鼻には自信がありまんねん。

げんじ:この楢(ナラ)で作った樽(たる)で熟成させたウイスキーじゃ。

    ジャパニーズオークなんて、呼ばれて人気なんじゃ。

    槍は樹齢100年以上の楢で作っておるが、

    樽は樹齢200年以上じゃ。

こころ:それは、凄いですね。今度作り方教えてください。

げんじ:うむ。わしは、もう、一日中飲んどる。

    みな、も、飲め。つまみは、その辺にどんぐりが落ちてるじゃろ。

ゆめた:いただきます。

こころ:でも、てんこがウイスキーの香りの違いに気づくなんて意外でした。

てんこ:いやいや、どうみてもそうやろ。

    せやけど、げんじさん、一日中飲んどるのは、心配やな。大丈夫なん?

ゆめた:てんこ、こころ!

    げんじさん、もう始めてる。

こころ:あ、本当ですね。

てんこ:なんや、あれ?

    お腹をさすって、頬を膨らませて、指をくるくる回す。

    ちょい聞いてみるで。

ゆめた:だめだ。

てんこ:・・・なんで?

こころ:槍づくりは、伝統ある、神聖なものです。

    まずは、見て学びましょう。

ゆめた:てんこも、こころも、真似。

こころ:あ、そうですね。やりましょう。趣ある作法ですね。

てんこ:そうかな?何の役に立つんやろ。意味が欲しいねん。

こころ:無駄口叩いてないで、早くやってください。

ゆめた:うん、その通り。

てんこ:わかった、わかった、やるさかい。

げんじ:・・・わしは・・・

こころ:はい、なんでしょう?

げんじ:一人が好きじゃ。チンパンジーみたいに群れるのは好かん。

ゆめた:はい。

げんじ:でも、みなが、どんどんいなくなるのは寂しい。

こころ:そうですね、この辺の森もだいぶ少なくなりましたもんね。

げんじ:・・・

てんこ:お、今度は楢の木を叩いとる。
    結構強く叩いとるで。

ゆめた:よし、やる。

こころ:いきましょう!

てんこ:ほんま?

ゆめた:ふん!

こころ:多分、槍に適した場所を探してるんですよ。

てんこ:いや、槍ができるって感じが欲しいねん。
    ゆめた、手から血が出とるで。

ゆめた:是非に及ばず

こころ:伝統の痛みですね。

てんこ:・・・そうなんか?

げんじ:・・・最近・・・

ゆめた:はい、なんでしょう?

げんじ:自分が、オランウータンなのか、楢なのか、分からなくなってきた。

こころ:深いですね。そこまで、やらないとだめなんですね。

    修行します!

てんこ:ほんまか?ただ、酔っぱらっとるんちゃう?

    あー、いつ槍ができるんやろう。

    っちゅうか、全体図があって、なんのためにこれをやっとんのか、

    わからんと、道筋も見えへんし、モチベーションも上がらんし。

ゆめた:ふん!

こころ:えい!

てんこ:あー、もう限界や。

    げんじさん、一体どないして作るんですか?

    俺は、どないして作るのかの全体図が知りたいんです。

げんじ:・・・全体図?作り方?

    いいだろう。教える。

こころ:え!?いいんですか?

てんこ:ほら、見てみんかい。

    伝統やからって、何も教えてくれないなんて思いこんどるのは、

    むしろこっち側やねん。勝手に決めつけて、勝手に誤解して。

げんじ:まず。楢を切り出す。乾燥に2-3年じゃ。

こころ:いきなり2-3年ですか?流石です。

げんじ:そしてから、長さを揃える。

ゆめた:はい!

げんじ:30本近くの、樽材を組んで、曲げるんじゃ。

    そして、加熱する。

てんこ:30本?組んで、曲げる?

げんじ:その後、底を設置して、穴をあけたら、あとは輪をかけて、仕上げじゃ。

てんこ:なんか、変ですね?

げんじ:何がじゃ、ここまでしないと、良い樽はできんのじゃ。

    ウイスキーに、楢の華やかな香りを移すのに苦労したんじゃ。

てんこ:・・・やっぱり。

    ほな、今までのは・・・

⑦+81mind 全体像-裏

 今回は、+81 mind の全体像をお伝えします。

 +81 mind の扱う領域、目的、目標などについてです。

 では、今回なぜそれをお伝えすることにしたか、これが⑦+81 mind 全体像-表 との関連になります。⑦-表のテーマが何についてであったかは気づいた方もいるかもしれません。SOC(sense of coherence) についてです。日本語では首尾一貫感覚とも呼ばれます。この後、簡単に見ていきますが、個別の内容も全体の中でどのような位置づけかをわかってもらった方が、理解しやすいとの観点で今回このテーマを設けました。(それであれば、本来第一回目にすべきですが、その辺はご容赦ください)

 では、SOCについて簡単に説明します。SOCは1970年代に医療社会学者のアーロン・アントノフスキーによって提唱された概念です。第二次世界大戦でナチスドイツの強制収容所に入れられた経験を持つ人の、精神的な健康状態を調査しました。比較的良好な人と、不良であった人の違いに着目して生まれたのがこの概念です。このSOCを持っている人は、比較的良好でいることができたというもので、これを持っている人はストレス耐性が高いということができます。また、他にも、自身を客観視する能力、メタ認知の高さなどにも結び付いています。具体的には3つの要素で構成されています。①把握可能感②処理可能感③有意味感です。

 ①把握可能感

   このSOCの中心的概念で、「筋道が通っている」感覚ともいうことができます。自分の内外で生じる環境刺激は秩序づけられた、

   予測と説明が可能なものであるという確信です。これがある人は以下のように考えられます。

   「今の仕事はとても困難でハードだけど、自身のキャリアのためには、将来必要だから、頑張る価値があるものだな」

   「瞑想なんて一見関係なさそうだけど、意識のコントロールを身に着けるためには必要だな」

 ②処理可能感

   その刺激がもたらす要求に対応するための資源は自分の内外からいつでも得られるという確信。

   同様にこれがある人は 以下のように考えられます。

   「やった事ない仕事だけど、できる所までやってみよう。周りの助けもあるし、自分も成長するだろうから何とかなるだろう」

   「自分の理想のショットには程遠いけど、一歩ずつ進んでいけば何とか辿りつけるだろう」

 ③有意味感

   今ある要求は挑戦であり、心身を投入し関わるに値するという確信。これも同様に以下のように考えられます。

   「この仕事は単純作業で地味だけど、会社全体の役に立っているし、感謝もされたし、価値があることだな」

   「メンタルのトレーニングを追加すると、さらに大変になるけど、〇〇のトーナメント優勝するためなら、価値があるな」

 このような感覚です。前置きが長くなりましたが、+81 mind method の個々の手法に関しても、全体として、なんの役に立つのか考えながら今後見ていただければと思います。

エレガントな紙

​~+81 mind method~

 目的・・・ゴルフの結果の向上

 

 方法・・・①ゴルフに関するメンタル面の向上(+81 mind 状態に入ることなど)

      ②それに付随した技術の向上

試合当日

​日常生活

トレーニング

+81 mind method の扱う領域

 +81 mind の 目的は言うまでもなく、結果の向上になります。成績の向上やスコアの向上とも言い換えることができると思いますが、成績やスコアは他者やコースセッティングなどにも影響を受ける分野なので、ゴルフの結果の向上という言い方が適切かと思います。方法は、ゴルフに関するメンタルの向上、それに付随した技術の向上となります。しかし、この「ゴルフに関する」というのが、かなり広い領域となります。日常生活での精神状態も+81 mind 状態への入りやすさなどにも影響します。結局、ほぼすべての領域が+81 mindで 扱う領域となります。試合当日、トレーニング、日常生活と3つの領域にわけたいと思います。そして、目的である ゴルフの結果の向上 を達成するためのそれぞれの目標が以下のようになります。

エレガントな紙

 目標

 試合当日

              A +81 mind 状態によるショットができる

              B 理想的なパターができる

              C ショット間のメンタルを良好に保つ

 

 トレーニング

              D 試合当日に結び付く練習を行う

    E スランプ脱出法を習得する

             

 日常生活

              F 日常生活でのメンタルを良好に保つ

 今まではこれらの目標を実現するための基礎となる理論や原因について説明してきました。今後も継続していきますが、加えて、具体的な手法についても説明していきます。+81 mind が提供する手法と、それにより達成を目指す目標は以下の通りです。

エレガントな紙

 手法

 +81 mind 瞑想        → A B C F

 +81 mind 呼吸        → A

 +81 mind パター       → B

 +81 mind 歩行        → C

 +81 mind カウンセリング   → F

 +81 mind CBT        → C F

 +81 mind スランプ脱出法   → D E

 +81 mind 注意トレーニング  → A B D

 (今後も開発予定)

 実際は、それぞれの手法と目標は、このようにこうきっちり分けられるものではありません。お互いに関連しあっている分野も多いです。しかし、わかりやすさのためにこう分類します。そして、次回から具体的にこの手法について見ていきたいと思います。

 +81 mind method の全体像については、コーチングのページでも公開しています。

 

 

 

 

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